先延ばしの原因と「自己診断テスト」で割り出す3つのタイプとは?
「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」(ピアーズ・スティール(著)、発売日2012/7/2)という、そのものズバリなタイトルの本書。
「先延ばし」をライフワークにしてきたという、カナダのカルガリー大学ビジネススクール教授ピアーズ・スティール氏が、先延ばしに関連した多岐にわたる先行研究をメタ分析し、一貫性のある結論を導き出したといいます。
著者が考案した数式「先延ばし方程式」によって人間が先延ばしをする主な要因を解明できたので、この悪癖を克服する戦略も判明した、というわけです。
今回は本書における先延ばしの原因と要因についてまとめ、次回に戦略や対策をまとめます。
著者の研究歴をたどると、以下の流れになるようです。
心理学 → 経済学 → 神経経済学 → 生物学的研究の土台である進化研究 → 環境問題などの長期の社会問題
まず大前提として、先延ばしを生む原因の一端は遺伝的要因、つまり脳の構造だといいます。
『私たちの脳は、ものごとを先送りするように回路が敷かれているのだ。先延ばし癖は、一億年に及ぶ人類の進化の歴史を通じて形づくられたものであり、人間という存在の性質そのものに深く刻み込まれている』
一億年!
そしてその脳のメカニズムとは?
『簡単に言えば、辺縁系が前頭前野の長期計画を覆し、目の前の物事を優先させるときに、先延ばしが起きる』
『辺縁系が活性化すると、目先のことが重要で切実に思え、視覚、臭覚、聴覚、触覚、味覚で感じ取れるものにばかり意識が向く。将来的な課題は、えてして後回しにされる』
『脳の中では辺縁系が目先のことに反応し、前頭前野が長期的なことに気を配る』
『辺縁系と前頭前野が一緒になって最終的な結論をくだすが、この両者がコンビを組む結果、先延ばしが避けられなくなる』
とはいえ、
『先延ばし癖が存在すること自体は環境のせいではないかもしれないが、その症状が重症化している原因は環境的要因にある』ということで、環境にも気をくばるべきと。
それでは、先延ばしの最大の要因とは何なのでしょうか?
先延ばし人間に共通する人格上の特徴で、とくに際立っている要素が『衝動に負けやすいこと』だといいます。
衝動に負けやすい人は、いますぐ手に入れたいと感じやすく、『要するに、将来のためにいま我慢することが苦手なのだ』とのこと。
『衝動に負けやすい人は、前もって計画して仕事に取り組むのが不得手で、ようやく仕事に着手したあとも、すぐに気が散ってしまう』と、耳の痛いお話しが続きます。
そして本書では、先延ばしが起きる構成要素を反映した3つのタイプが紹介されており、「自己診断テスト」でそのタイプを割り出すことができます。
これら3タイプは架空人物のストーリーによっても説明されているので、自分がどのタイプなのか確認しやすくなっています。
私がこの3タイプを読んでいて気づいたのは、この3パターンの要素と自分を照らし比較することは俯瞰視することであって、その客観的な視点こそ自分にとって常に意識したいことではないか、ということでした。
3タイプの人物名はエディー、バレリー、そしてトム。それぞれの特性は以下のとおりとなっています。
- エディー:
どうせ失敗すると決めつけるタイプ(期待)。どうせまた失敗するだろうと、結果に対する期待が小さく、目標達成不能と決めつける。 - バレリー:
課題が退屈でたまらないタイプ(価値)。課題に対して価値を感じられない(課題に対して感じる楽しさのことを、研究者は「価値」と呼ぶ)。 - トム:
目の前の誘惑に勝てないタイプ(時間)。行動の決定要因は、時間(タイミング)。すぐに手に入るご褒美をはるかに魅力的だと感じる、衝動に負けやすい人間。
これらの特性のなかでも、トムの要因は先延ばしの本質そのもの、とのこと。
そして、
『あなたが先延ばし人間だとすれば、かなりの確率でトムにいくらか共感を覚えるはずだ。この自己診断テストでは、「将来の大きな快楽より、目先の小さな快楽を優先させる」に該当したのではないだろうか』
というご指摘…。
図星です(笑)。いえ、笑ってる場合ではありません。
これは…なかなかなダメ人間じゃないですか。
これまでの研究によって明らかになっているのは、『衝動性の強さ、そしてそれにともなう根気のなさ、自己コントロール能力の弱さ、集中力の乏しさが先延ばし行動の中核をなしている』ことだといいます。
つくづく先延ばしの克服がいかに手ごわいか、と思わせられます。
自分がどのタイプなのか気になるかたは、本書「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」を手に取ってチェックしてみてくださいね。
先延ばしを克服する戦略まとめは、次の記事でお伝えします!