ひらめきが9割

人間のふるまいは何によって決められるのか?そんなことを探っています。

「先延ばし」の定義と核心とは?

実践版GRIT やり抜く力を手に入れる(キャロライン・アダムス・ミラー(著)、発行日2018/2/26)は、コーチングに従事し講演活動も行うポジティブ心理学のエキスパートである著者による、”究極の「成功」と「幸せ」の技術”の書とのこと。

そこで、本書の中で触れられている「先延ばし」に関する記述をピックアップしてみました。

 

まずは、「先延ばし」の定義について。

 

「先延ばし」とは、

未来にネガティブな結果が起きることが予知できるにもかかわらず、自発的に行動を遅らせること

と定義され、

 

カールトン大学のティモシー・ピッチェル教授によると、

「今この瞬間に良い気分になりたいという衝動に屈することが先延ばしの問題の核心」

であると。

 

また、人が先延ばしをする主な理由のひとつには、

「面倒の先読み」と言われるものもある。これからやるべきことに取り掛かることを想像するとき、私たちは今使える時間やエネルギー以上の時間とエネルギーを要すると考えるのだ

というのです。

 

個人的に最も共感したのがこの記述で、"まさにコレだな"と。

「わー、大変だー」と思ってしまい、その思いが勝ってしまうということでしょうか。

 

さらに、

「最近の研究では、不安やうつを抱えると物事を先延ばしにしがちだということが示された。私たちの思考は不幸に支配されると、諦めるという選択がしやすくなるから」

とも。

 

また、先延ばしをする人の傾向については、

「先延ばしをする人というのは「一時的な近視眼」に陥りやすいタイプ、言い換えれば、長期目標をうまく達成するプランを考えるのが苦手なタイプだ

といい、これには共感しかありません。

その自覚は、ええ、何気に以前からありました。そしてそれは何事にも困難を招きがちだということも…。

 

ただし、先延ばしをする人の傾向について、著者が高校から大学にかけて、約10年間、摂食障害過食症)に苦しんだ過去にも触れて、

「子供によっては、他の子どもよりも忍耐力をつけるのに困難をきたす場合もある。私は、幼少期にADHDと診断された。私が10代のときにいとも簡単に過食症に陥ったのも、ADHDに一因があった」

と記されています。

 

そして、

即時性の追求は、行動に対して常に快楽や報酬をもたらす効果がある一方、今や、あまりにも大きな労力を伴うように感じられる行動は、取り組むのが先延ばしになってしまうのだ

ということです。

これこそが、誰にでも起こりうる先延ばしの正体なのではないだろうか、と思った次第です。

 

「先延ばし」に関しては、以上のまとめになりますが、そもそも、本書のタイトルである「グリット」とは何なのか? 

「グリット」とは、「やり抜く力」とのこと。「グリット」の提唱者と呼ばれるアンジェラ・ダックワースが、2005年にペンシルベニア大学の研究室で、ある性格的特徴についての研究を発展させる試みを始め、その性格的特徴を「グリット(やり抜く力)」と呼んでいたといいます。そのグリットを評価する尺度となる12項目からなる「グリット・スケール」も彼女が開発したとのこと。

 

著者が「グリット」と出会ったのは、2005年から2006年にかけて、著者が応用ポジティブ心理学―幸せに関する科学―の学位を取るため、ペンシルベニア大学で初の応用ポジティブ心理学修士課程に在籍していたときとのこと。当時、博士号取得のため同大学で研究をしていたアンジェラ・ダックワースを紹介されたといいます。ダックワースは「長期的な目標を追求する情熱と粘り強さ」とダックワース自身が定義づけた「グリット(やり抜く力)」と呼ばれる資質について研究していました。

著者はその「グリット」に強くひかれ、その後、目標設定論、自己効力感、社会的伝染といったテーマにはまっていき、著書『最高の人生のつくりかた』(未邦訳)を出版。その本の中で、学術界の外ではほとんど知られていなかったダックワースの研究について取り上げたといいます。

 

そして、本書について著者は、『自分の「強み」を伸ばし、グリットの高い人々に見られる行動パターンを身につけ、それを習慣化するための方法に関連した研究や科学的知見を紹介する』と記しています。

なお、参考文献一覧などは残念ながら記載はありませんでした。

 

本書に登場する「高いグリッド」を持つ人々のエピソードを何度も読みつつ、子供のころに忍耐力を養うことがいかに重要であるかを感じさせられた1冊でした。