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「Lifespan」デイヴィッド・シンクレア博士による老化の科学最新情報

LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界

ハーバード大学医学部の遺伝学教授デイヴィッド・シンクレア博士による「Lifespan Podcast」が公開されています。

 

LIFESPAN(ライフスパン)―老いなき世界」(デビッド・A・シンクレア (著), マシュー・D・ラプラント (著)、発売日2020/9/16)が出版されてから2年ほど経ち、共著者のお二人が語る「老化と人間の健康分野における最新の科学」とは?

複数のエピソードのなかから、「脳を健康に保つ科学」についてご紹介したいと思います。

 

シンクレア博士によると、老化そのものに対する身体の防御力を高めることで、人間の脳の年齢を逆転させ若返らせることができれば、アルツハイマー病やその他の脳の病気はなくなり、失われた記憶さえも取り戻すことができるというエビデンスを確信している、といいます。

 

脳を健康に保つために、日々の暮らしのなかで私たちが配慮すべきことは何なのでしょうか?

 

それは、地中海食を食べること、運動をすること、しっかり睡眠をとること。

 

『脳の老化を制御するために最も重要であると思われるのが、主にSIRT1』とのことで、このSIRT1の活性を高めるために有用な成分を摂取することをおすすめされています。


SIRT1とは長寿遺伝子として知られているサーチュインファミリーのひとつで、哺乳類では7つのサーチュイン(SIRT1からSIRT7まで)が存在するとされています。

 

『2022年初め、トマソ・ボルドリーニによる大規模な国際研究グループによる研究があり、地中海食の順守率が高いほど、アミロイドβの減少、タウの減少、灰白質の体積の増大と関連することが示された』とのこと。これらはすべアルツハイマー病と関連しています。

 

また、2017年の別の研究では、1000人以上、実際には2000人近くが対象となったもので、地中海食をとっている人は、認知症リスクが10%減少したとのこと。

 

地中海食の何が脳を活性化するのでしょうか?

 

地中海食には、オリーブオイルを使い、赤ワインを飲んで、果物や野菜を多くとる、そして赤身の肉はあまり食べないなどの特徴があります。

 

赤ワインに含まれるポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、SIRT1を直接活性化するとのこと。『酵素パックマンのように遺伝子を制御して、より速く働くようになる』のだそうです。

 

もう1つはオリーブオイル。オリーブオイルの主成分であるオレイン酸がSIRT1に作用するとのこと。

 

さらに不足なく摂取すべき栄養成分としては、とくにビタミンB群が挙げられています。

 

ビタミンB12が不足すると、DNAをメチル化する能力が不足することが知られており、エピゲノムを混乱させ、老化の原因となる時計を早める可能性が非常に高い』のだそうです。

 

また、多くの研究で、B12の欠乏が心臓病や認知症など、さまざまな病気を加速させることが示されているといいます。

 

ビタミンB群が不足するとホモシステイン値が高くなるといい、ホモシステイン値が高いと認知症になりやすいという相関関係があることが知られているそうです。

 

ホモシステインとは、血中に存在するアミノ酸の一種で、心臓病や認知症の予測因子として上昇することが示されている物質とのこと。

 

そのほか、とるべき栄養素としては、オメガ3脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、α-リノレン酸またはALAが挙げられています。

 

オメガ3脂肪酸は脳の構造的な構成要素を形成していることがわかったそうで、オメガ3脂肪酸を多く摂れば摂るほど、それが炎症やダメージから守り、神経が機能し、損傷した場合に修復するのを助けてくれる、といいます。

 

そして、運動について。有酸素運動や、ただ歩くだけでも、年をとってから記憶力や認知力が向上する可能性があることが示されているとのこと。

 

その理由は2つあり、ひとつは血流がよくなること、もうひとつは神経細胞の活性化と、その細胞の老化を遅らせること。

 

『2013年の研究で、ペレラたちが高齢者コホートで発見したものです。451人を対象にした研究で、たった10週間の筋力トレーニングが、新しい脳細胞や新しい神経を成長させる因子のレベルを増加させることを発見したのです。このマーカーはBDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれるものです』。

 

そして最後に睡眠についてです。睡眠が不足すると老化が老化が早まるとのこと。

 

『分子レベルでも、SIRT1とNADが覚醒-睡眠サイクルの制御に基本的な役割を果たすことがわかっています。SIRT1の機能が低下し、NADレベルが低くなると、よく眠れなくなるだけでなく、老化が早まるということを理解することがとても大切です』。

 

年を取れば取るほど睡眠が浅くなるので、よく眠れなければ、老化に対抗する能力も失われるといいます。

 

よく眠るために朝やるべきことは、光を浴びること。それによって概日リズム(サーカディアン・リズム、一般的に体内時計という)をリセットすることができるといいます。

 

2020年に行われたミバエを使った研究では、ハエから睡眠を奪うと、腸内で酸化ストレスが大量に発生することを発見し、また寿命が短くなることを発見したといいます。ちなみにNADブースターで治療すれば救われる可能性があるそうです。

 

なんと、一晩の睡眠不足はアミロイドβの産生を5%増加させるのだそうです。

 

睡眠はとても重要なのですね。

 

私としては、食べて寝ることはまあまあできているのですが(笑)、運動不足をいかに解消するか、それが当面の課題です。